弁護士や裁判官ともつながった留学生活
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
博士後期課程2年 櫻本 貴士
留学先:米国 University of California, Berkeley (Professor F. Dean Toste)
留学期間:2017年10月20日〜2018年1月19日

「これがやりたい!」と、自ら動くキャラに変身!
私がお世話になったF. Dean Toste教授の研究室は、学生・ポスドク合わせて30人程度の規模の大きな研究室でした。
現地では、研究テーマを伝えられます。私の感覚では、その後で「こうすれば、ああすれば」といろいろ教えてくれるのかなと思っていました。しかし現実は厳しく、ほぼ放置状態(笑)。
例えば、あるテーマを統括するポスドクの方から「収率を改善して欲しい」という指示を受けても、具体的な方法までは言及されません。上から「こうすれば、ああすれば」という指示を出すよりも、私にアイデアを出させて、それをどんどん試していく。そして面白い結果が出たら、それを発展させるというスタイルで研究を進めていることに気づきました。
それからは「このまま、日本の感覚でいてたらダメだ」と頭を切り替えて、「これがやりたい!」と自ら動くスタイルをに変えていきました。

留学先での研究テーマはメチオニンの選択的修飾
阪大ではバナジウム触媒を使って、二酸化炭素から尿素誘導体を、アリルアルコールからアリルアミンをつくる反応などを研究してきましたが、留学先ではメチオニンの選択的修飾という、全く違う研究テーマに取り組みました。
メチオニンとはタンパク質を構成するアミノ酸のひとつですが、硫黄とアルキル基があるため疎水性が高くて有機分子で修飾しづらかった。そこをなんとかメチオニンだけを選択的に修飾することができれば、タンパク質をマーキングすることができ、医薬品分野への応用も期待されます。このような修飾に使うことができる有機分子の合成反応に取り組んでいました。

弁護士や裁判官との意外な交流
今回の留学では、普段の生活では交わらない分野の日本人の方と知り合えたことも、とても印象に残っています。「留学先で日本人と出会う」というのも意外な感じですが、カリフォルニア大学にはロースクールもあったので、日本から留学してきた現役の裁判官や弁護士の方たちとも交流することができたのです。
日本人コミュニテイの幹事の方が、留学生たちの交流の場を設けてくださったおかげで、分野の全く異なる方たちと交流できたことは、私の大きな財産になったと感謝しています。
ドミトリー形式のルームシェアはしんどい!?
最初はサンフランシスコに住んでいたのですが、物価が高くて、家賃を安くおさえるために4人でルームシェアしていました。ルームシェアといっても大き目のワンルームに、4つベッドが置かれているドミトリータイプの部屋だったので、かなりしんどかったですね(笑)。1ヶ月は我慢しましたが、その後、別の部屋に移って一人暮らしに戻りました。

自ら動き、学生生活の総決算の1年に
留学して変わったことは、「自分から動かないと何も始まらない」という意識が強まり、実際に自分から動くようになったこと。英語も、「通じるかな?」とか考えていないで、「とりあえず喋ってみる」スタイルに変わりました。
私は大学院卒業後に就職する予定ですので、学生生活もあと1年。留学で身につけた新スタイルで、これまでやってきた研究をさらに進めながら、きっちりまとめあげる総決算の1年にしたいと思っています。

<博士後期課程に進んだ理由>
化学の研究者でやっていくには、世界的には博士号を持っていないと1人前と認めてもらえないと思ったので、博士後期課程に進学しました。大学3、4年の頃には、かなり悩みました。
