インタビュー

博士論文発表会レポート(前編)博士課程の学生とは?

応用化学専攻 有機金属化学領域 生越研究室 D3
河島 拓矢さん
木下 拓也さん
白瀧 浩志さん

高度な研究能力と豊かな学識を備える「博士」

大学院には修士課程(博士前期課程)と博士課程(博士後期課程)があり、前者は概ね2年間、後者は概3年間で学位の取得を目指します※1。 博士課程の教育の目的は、高度に専門的な業務に従事するに必要な高度な研究能力及び豊かな学識を身に付けることで、工学研究科の博士課程を修了した者には「工学博士」という学位が授与されます。

※1:大学院の博士課程を修了した者に与えられる他、大学院の博士論文審査に合格し、かつ、大学院の博士課程を修了した者と同等以上の学力を有することを確認された者に対しても博士の学位の授与を行うことができます。

博士課程修了のための大きな山が、博士論文発表会。教授をはじめとする専攻の教員達を前に、博士論文の口頭発表30分、質疑応用30分の、計1時間で博士論文の内容が精査されます。その場で指摘された内容を反映した博士論文を後日提出して、学位授与の最終的な合否が判定されます。この博士論文発表会は発表者である大学院生にとって、とてつもなくプレッシャーがかかる一世一代の大イベントなのです。

今年度の博士論文発表会を終えた7名の学生(分子創成化学コース)

今回は、平成30年12月7日(金)、8日(土)に行われた、応用化学専攻博士論文発表会に臨んだ生越研の博士課程3年(D3)の3名にお話をうかがいいました。

応用化学の道に進んだ理由やきっかけは?

白瀧■
大学受験を考え出した頃は、化学を目指していたわけではなくて、医学部を目指していました。でもドラマの中で医者が可愛い女の子の腕を切断するシーンを見て、「ああ・・・これは自分には無理だ」と思ったのです。そこでその頃もう一つ興味があった環境やエネルギーについて考えていく中で、理系の学問の中では化学が地球温暖化防止などに最も貢献できると思い、化学の道に進みました。

白瀧さん

河島■
困ったなぁ・・・。
自分のイメージの中で、優秀そうな人が集まっているのが化学かなという印象があった。物事(事象)の根本や基本、原子レベルから学ぶことができて、化学が一番勉強になりそうだという印象が強かったですね。化学に対する印象がもともと良かったのだと思います。

木下■
以前から、身近な生活にかかわっているモノに興味がありました。我々の身の回りには化学製品が多いですよね。洋服に使われている繊維とか、生活にかかわっている分野の化学で、分子レベルで構造の制御や組替えで新しいモノをつくれたらいいなと思った。そこで、身近にあるけど、ちゃんと基本的な部分から知らなければいけない化学を選びました。

木下さん

化学の面白さは?

白瀧■
自分が知らないことが起こっていることがわかったときは楽しいですね。加えて、わからないながらにいろいろな事象を積み重ねていったとき、一定の傾向を見つけることがあります。その瞬間は、嬉しいですね。

河島■
確かに、初めて目にするの現象に出会った時は非常に嬉しいですね。化学の実験はうまくいかない方が圧倒的に多いのですが、測定していて「あっ、予想してなかったことが起こっている!」と気付いたときはすごくワクワクします。そんな実験をしているのは世界で自分だけですから。

河島さん

木下■
化学の面白さは、自分が世界で初めてつくった化合物で使っていろいろなことができることに尽きますね。「世界で初めて」が醍醐味。そこが一番楽しいところです。

博士課程に進学した理由は?

河島■
私は昔から純粋に学ぶことが好きだったのですが、学部4年と修士課程の計3年間勉強しただけでは、正直まだまだダメだと思いました。たった1回の人生ですから、とことん自分が面白いと思ったことを突き詰めて、自分が満足するまで学び尽くしたいなと思ったことが、博士課程に進んだ理由です。

木下■
修士課程で取り組んだ研究が面白かったので、まだ続けたいなと思ったことが一番の理由です。修士論文を書くときに、「これを使ったらまだいろいろなことができそうだし、どうせなら自分でやりたいな」という思いが強かった。
キャリア的に考えても、世界的にはこれからますます博士号が重要になってくると思っていたので、学位を取っておいて損は無いという思いもありました。

白瀧■
実はもともと、博士課程には残る気は全くありませんでした。しかし、1年間休学しているときに就職して活躍している同級生と話すうちに、自分はもっと幅広い知識を身につけたいと思いました。化学だけではなくて、生物も物理も経済も人間科学も、もっといろいろなことを知って、面白いと思えるものを見つける力が欲しくて博士課程に残りました。それが一番のモチベーションでした。

学部/修士課程と博士課程の違いは?

白瀧■
修士課程までは教員から課題を与えられて、その課題解決の方法を考えます。一方、博士課程では、「じゃあ課題は何なの?」という課題設定能力を身につけないといけない。
課題の解決方法については論文で情報を得ることができますが、課題を設定するためには莫大な情報を自分で整理して、何が課題か突き詰めていかなければならない。博士課程とは何が課題かを考え続ける期間だと思います。

河島■
白瀧さんと同じことを考えていました。博士課程では、課題を発見をしなければなりません。
それに加えて、博士課程に進むと、自分から積極的に海外へ出て行って発表したり論文を書いたり、つまり自身の研究をアウトプットする機会が一気に増えました。ちなみに教員と一緒に海外の学会に参加したとしても、口頭発表での質疑応答では教員からのフォローは一切ありません(笑)。もともと研究室でのディスカッションで(厳しい先生方に)鍛えられていますので、学会のほうが楽ですね(笑)。

木下■
お二人の話に尽きると思います。ひとつ加えるとすれば、博士課程の研究では今までの知見を組み合わせることで、新しいことについて教科書に載るような深いところまで入り込んでいけることだと思います。
また、研究室内の立場としては、後輩たちを指導する機会が増えます。何人かの学生が下につきますので、彼らにアイデアを投げてディスカッションをする必要があり、この役割も大きいですね。

今回の前編記事では、3名の学生のコメントを通じて、応用化学専攻の博士課程の学生像が垣間見えてきたのではないでしょうか?
後編の記事では、いよいよ「博士論文発表会」と怒涛の打ち上げパーティについてご紹介してまいります。(つづく)

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