インタビュー

スパイシー体験!! 米国サンディエゴ留学記

大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
鳶巣研 博士後期課程3年 安井 孝介 
留学先:米国サンディエゴ スクリプス研究所(Prof. Phil Baran)
留学期間:2018年4月?2018年9月(D2時代)

反応開発から全合成の世界へ!?

鳶巣研では、遷移金属触媒や有機触媒を用いた「反応開発」に取り組んできました。炭素?酸素結合をロジウム触媒で切断するような反応ですね。反応開発という研究分野は「新しい化学反応を創り出す」という点に焦点をあてるので、できてくるモノには重きを置かず、どういうプロセスで反応が進んでいるかを見極める基礎研究です。

Phil Baran教授との2ショット

そんな私が留学先でお世話になったのは、「全合成」という学問分野の大家と言うべきPhil Baran教授。全合成とは複雑な天然物をシンプルな原料から有機合成を駆使して創り出していく、非常に緻密さが求められる研究分野です。
反応開発をやっていた自分が全合成をやりたいと思った理由は、製薬会社への就職が頭にあったからです。反応開発だけでは心もとない部分があったので、連続的に化合物を変換していく全合成のスキルを身につけたいと思い、Phil Baran先生のもとで研究したいと考えました。

失敗しても・・海を眺めて気分転換

スクリプス研究所での全合成の研究は、私のやっていた反応開発よりも緻密さが求められるので、留学当初は正直、全然通用しませんでした。反応開発の分野では何ができるかということは重要でなかったのですが、全合成ではターゲット物質が明確に決まっていますので、目的のモノができないとそこから先に進むことができません。研究に対する考え方が全く違うのです。

スクリプス研究所の研究室から見える海!

実験がうまくいかないときは結構へこむのですが、意外と引きずらずにすみました。というのも、スクリプス研究所は海辺の切り立った崖の上に建っているので、研究室からバッチリ海が見えるのです。西海岸なのでサンセットも見える。そんな海の風景を見ていると、結構新鮮な感じがして気分転換になるんです。
阪大からは海が見えないですからね。

セブン-イレブンで研究に打ち込んだ

サンディエゴでは阪大よりも長時間、研究に打ち込みました。朝7時から夜の11時ぐらいまでは、研究室にいました。正直、そうしなければ終わらなかったというのもありますし、それぐらい熱意を持ってできたことは、いい経験になったと思います。
数少ないオフの時間は寝ているか、本を読むか、映画を見ていました。自分としては英語は得意なつもりでしたが、アメリカ人などの英語ネイティブの人の英語を聞き取れなくて、英語の映画を見て英語力を上げようとしました。そのうち1、2ヶ月もしたら、耳も慣れてきてかなり聞き取れるようにはなりました。

スパイシーなオフタイム

サンディエゴでは料理好きのインド人学生とルームシェアをしていました。バス、トイレ、ベッドルームは自分専用のものがあるのですが、リビングとキッチンは共用。最初に部屋に入ったときは、本当にインドに来たみたいな強烈なスパイスの香りがしました。でも不思議なもので、すぐにスパイスの香りにも慣れてしまって、留学の最後の方は家に帰ってカレーの匂いをかぐと「ああ我が家だ・・・」みたいな感じになってました(笑)。よく料理のおすそ分けをいただきましたが、カレーやタンドリーチキンは美味しかったですよ。

ルームシェアしていたインド人学生と

インド人学生とのルームシェアで、日常的に英語を使う環境に身を置けたという点では有り難かったです。生物の研究をしている彼の話は聞いているだけでも面白くて、今でも連絡を取り合っています。
サンディエゴはIPAビールが有名なのでよく飲みました。アルコール度数9?12度ぐらいの濃いビールで、美味しかったですね。1パイント(473ml)500円ぐらいからで、日本よりはだいぶ安いですね。そんなこともあって最初は太ってしまったので、ジムに通うようになりました。

※IPA:India Pale Ale(インディアペールエール)。ホップを大量に使用した、香りと苦味がしっかりした上面発酵ビール。

茶谷先生と動物園へ

動物園でかなりご機嫌の茶谷教授

留学中に茶谷先生が講演で来られて、「時間があるから動物園に連れてって」と希望されたので、一緒に動物園に遊びに行きました。サンディエゴには大きな動物園があるんです。
教授の先生と動物園に遊びに行く機会は滅多にありませんので、なかなかいい思い出になりました(笑)。

大学教員になります!

私は博士号取得後は大学に残って、アカデミックな研究の道に進みます。
大学教員として、自分の中では2つ大事なことがあると思っています。
ひとつは、研究を通じて新しい現象を発見して世に発信し、人々の生活のレベルアップに貢献すること。
もうひとつは、化学をしっかり理解した人を多く育成して世に出して、間接的に化学に貢献すること。
この2つを自分の軸として忘れずに、熱意をもって取り組んでいきたいと思っています。

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