炭素原子1つだけを埋め込む新反応!
鳶巣研究室の仲保文太さん(博士前期課程)、藤本隼斗助教、兒玉拓也助教、鳶巣守教授らの研究グループは、アミド化合物にN-ヘテロ環状カルベン(NHC)を反応させることで、炭素原子1つだけが正確に埋め込まれてγ-ラクタム化合物が得られるという反応を発見しました。

炭素原子は価電子を4つしか持たない極めて不安定な化学種で、これまで有用物質合成には利用できませんでした。
今回、鳶巣教授らの研究グループは、安定な有機化合物であるNHCを炭素原子等価体として用いることでこれを実現しました。
本研究成果により、医薬品、農薬などの多様な有用化合物に広く含まれるアミド化合物に炭素原子を1つ埋め込んだγ-ラクタム化合物へと変換できます。したがって、γ-ラクタム構造を含む従来法では合成困難な多様な新規物質群から成る化合物ライブラリを拡充し、医薬品候補化合物の迅速探索に貢献することが期待されます。さらに、炭素原子を埋め込むという反応設計概念は、アミド化合物以外にも原理的に応用可能であるため、さらなる多彩な炭素原子埋め込み反応の創出も期待されます。
これにより、医薬品候補化合物の迅速探索・高効率合成への応用等が期待されます。
本研究成果は、2023年2月3日(金)4時(日本時間)に米国科学誌「Science」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Single carbon atom transfer to α,β-unsaturated amides from N-heterocyclic carbenes”
著者名:Miharu Kamitani, Bunta Nakayasu, Hayato Fujimoto, Kosuke Yasui, Takuya Kodama and Mamoru Tobisu*(責任著者)
DOI:https://doi.org/10.1126/science.ade5110
なお、本研究は、JSPS科学研究費助成事業基盤研究Aおよび挑戦的研究(萌芽)の一環として行われました。
これからも応用化学専攻の研究者から目が離せません!
本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230203_1
鳶巣研究室
https://www-chem.eng.osaka-u.ac.jp/~tobisu-lab/index.html
ICS-OTRI
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/ics_otri/

前列左から:神谷さん、仲保さん