工学賞受賞者に聞く②
「文武両道 継続中!」
正岡研 修士課程1年 今井 真秀さん
<工学賞とは>
工学賞とは、学部4年間の成績優秀者に送られる工学部独自の賞。応用自然科学科応用化学科目からは2名が選ばれ、受賞者には工学部長より賞状と記念品が送られます。
正岡研から2名の工学賞!
工学賞は全く意識も予想もしていなくて、受賞のご連絡をいただいたときは驚きしかなかったですね。盾と賞状をいただいて嬉しかったです。正岡研から2名受賞できたのもびっくりです。
1年の授業で化学に惹かれた
小さい頃に、父から「世の中の全ては、分子からでききていて、さらに細かく見ると原子からできている」という話をなんとなく聞いた覚えがあります。それが化学に興味を持ち始めた最初のきっかけだったと思います。阪大工学部へ入学した当時は、化学よりも物理に興味がありました。
しかし、1年夏の授業で「化学は分子サイズでモノを設計して自由に作り変えることができる唯一の学問である」と聞いて、面白そうだなと感じて応用化学科目に進むことに決めました。
1年に受ける授業の影響は大きいですね。
武術太極拳に熱中!
大学で勉強以外に熱中したことといえば、なんといっても武術太極拳。
私がやっている武術太極拳とは演技、いわゆる「型」で、採点型の競技になります。自分で武術の動きをまとめた套路を演じて審判に採点してもらいます。
幼稚園の年長からはじめて以来、ずっと同じチームに所属しており、もう15年以上続けています。昨年秋にオンラインで開催された世界大会では、長拳という種目で4位入賞することができました。
普段は研究室で実験を終えてから、ジムに行って筋力や柔軟性を養うトレーニングをしています。学部のときは大学の勉強に加えて、公文のバイトと武術太極拳を両立できていましたが、結構過密なスケジュールでした(苦笑)。
今年予定されていた世界大会がコロナ禍で来年に延期されてしまったので、そこに出場するまでは競技者として武術太極拳を続けていくつもりです。
光と鉄触媒でCO2を還元
私の卒論テーマは「鉄ポルフィリン錯体を用いた光化学的CO2還元」でした。
光を利用し、鉄触媒によってCO2を還元しようという研究です。現状ではCO2をCOまで還元できたことは確認済みで、修士課程でも同じ流れの研究を続けています。
ポルフィリンというのは環状の化合物で、その真ん中に鉄が入ったものがポルフィリン鉄錯体です。正岡研では多くの金属錯体の研究が並行して進んでおり、鉄に関しては、鉄5核錯体と鉄ポルフィリン錯体という2つの錯体が主に研究されています。
学部4年の9月の学会ではポスター発表を、3月の学会では口頭発表を行いました。
今はCO2還元反応のメカニズム解明に取り組んでいます。「プロトンと電子の移動」を促進することで触媒能を向上させようと錯体を設計し、実験でも触媒能が向上したのですが、この移動が本当にメカニズム的に触媒能向上に寄与しているのかを確かめようと奮闘中です。
愛着とやりがいを感じる研究テーマ
学部時代の学びは座学の授業が中心でした。4年で研究室に配属されてからは、授業以外の長い時間を一つの研究テーマを突き詰めることに費やすようになり、私の場合、自分のテーマに対する愛着が湧くようになりました。
そして私の研究テーマも、「人工光合成」という世の中から注目されているホットな研究分野であり、大きなやりがいを感じて取り組んでいます。
学生が研究しやすい環境を整えてくださる正岡研の先生方には、本当に感謝しています。太極拳の練習にも快く送り出していただいています。とても居心地が良くて、研究もはかどります。
博士号取得には魅力を感じます
修士課程終了後は、博士後期課程に進学するか、民間企業に就職するかはまだ決めていません。
博士号は研究者として自立している証明であり、世界に通用する資格という意味で非常に魅力を感じています。しかし、私には博士後期課程に進学してこれを研究したいという対象がまだ定まっていません。自身の研究が進展してそれが明確になってくれば、博士後期課程に進学する意味がでてくると思っています。
就職か進学かどちらの道に進むにしても、世界中の多くの人たちの生活の質の向上に貢献できるような研究や仕事に関わりたいです。例えばエネルギー問題の解決につながるような、壮大なテーマに取り組んでいきたいと思っています。
文武両道で世界を目指したい
応用化学専攻は、研究に打ち込んでみたい人にとっては、好きなだけ研究に打ち込める最高の環境です。少なくとも、正岡研はそういう環境ですね。自分で新しいことをしたい、誰もやっていない研究に打ち込みたい、そんな想いを持つ人には最高です。
私もそういう環境の中、文武両道で研究と武術太極拳に取り組んでいきたいと思います。来年中国で開催予定の大学生の世界大会で、日本代表選手としての参加が内定していますので、そこに出場するまでは練習のペースは落とさずにやっていこうと思っています。