インタビュー

「覚醒コミュ能力!!フランス留学記」

大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
林研 博士後期課程2年 香川佳之さん 
留学先:フランス ストラスブール大学 (Dr. Jean Weiss)
留学期間:2021年9月21日〜2021年12月17日

コロナ禍の中での留学

私がフランスの留学先に渡航したのは2021年9月。日本は新型コロナウィルス感染症拡大第5波の真っ只中でピリピリムードでしたが、フランスでの状況はだいぶ違っていました。空港での入国手続きも非常にスムーズでしたし、なにより留学先の研究室での人の行き来が非常に盛んだったことには驚きました。フランス人の研究者は普通に欧米各国に出かけていましたし、フランス内外の研究者を招いての講演会(対面です)も、研究室で毎週実施されていました。多くの国と陸続きという環境もあるのでしょうが、人々の判断基準がちょっと違うのです。フランス人学生は、「我が国では1万人以下の感染者数はゼロ扱いだよ」と言い切っていました。日本ではかなり緊張感を持っていたのですが、なんだか拍子抜けした覚えがあります。

一方、日本に帰国したときは大阪市内のホテルで3日間缶詰め状態で、それから自宅で隔離生活を送りました。ホテル滞在中はちょうど学会がオンラインで開催されていましたので、部屋の大きなT VにPCをつないで講演を聴いたりして、時間を持て余すことはなかったです

林教授の紹介でフランスへ

私はフランス ストラスブール大学に留学し、超分子の研究をされているJean Weiss(ジョン・ヴァイス)教授の研究室でお世話になりました。修士課程在学中に留学用の奨学金がとれたので、海外留学の意志があることを林先生にお伝えしたところ、ジョン先生を紹介していただきました。その後、コロナ禍の影響で留学自体が1年延期になったため、博士後期課程1年のときにフランスに渡航しました。

ジョン・ヴァイス教授のご家族とともに

林研での研究テーマは人工酵素

もともと林研では人工酵素の研究をしていました。自然界に存在しない分子を合成し、タンパク質と組み合わせて人工酵素をつくります。それを触媒として用いることで、特定の化学反応を促進する研究を続けていました。これまでの触媒では実現できなかった難しい化学反応を、人工酵素で達成することが目的です。今はきっちりと評価を行うためにフラスコの中で人工酵素をつくっている段階ですが、将来的には細胞の力を借りて酵素をつくることもあるかもしれません。

林研の同期学生たち

日本とフランスの違い

留学先のジョン・ヴァイス教授の研究室では、有機合成により超分子をつくる研究が進められています。
使用するパーツ(化合物)は林研での研究と似ているのですが、その目的が違います。私は人工酵素で触媒反応を実現しようとしていますが、彼らは分子そのものをつくることを目的としています。

フランスで使う実験器具は日本と似ているのですが、使い方やルールが異なっているので、最初の1ヶ月は慣れるのに苦労しました。例えば、沈殿物を採取したいとき、日本ではろ紙でこし取るのですが、フランスでは「紙」を使いません。シリカ材質の板の上に直接流して、へばりついた沈殿物をかき取るのです。最初にその器具を見たときは、「紙はどこにあるの?紙はどこ?」と周りの人たちに訊き続けて、彼らは「紙って???」みたいな、完全なすれ違い状態でしたね(笑)。スパチュラ(薬さじ)ひとつ見ても、日本のはちゃんとへこんでくれているのに、フランスのは真っ平らのクールなデザインなので、なかなか使いづらかったです(苦笑)。

グローバルな環境

ジョン先生の研究室に在籍していた学生の半分は、フランス人以外の人たちで、ドイツ、イギリス、中国と多国籍。教員もフランス人とアメリカ人で、とてもグローバルな環境でした。

ジョン・ヴァイスラボのメンバー達

コロナの影響もあってか日本人にはほとんど会うこともなく、そういう意味では留学らしい生活でしたね。周りにはドクターコースの学生が多かったのですが、ランチタイムには博士論文の悩みやラボの愚痴を言い合ったり、クロスワードをみんなで解いたり、ちょっと政治の話を齧ったりしていました。
面白かったのは、ドイツとフランスの学生。冗談なのでしょうが、「これだからフランスは・・・!」「やっぱりドイツは・・!」とかいつも言い合っていました(笑)。

刺激的な講演会

留学先の研究室には、週に1回いろいろな先生がアメリカやE U諸国から講演に来られていました。その当時、日本はコロナ禍でオンラインばかりだったので、対面で講演を聞けるのは、非常に新鮮で刺激的でした。

毎週の講演会

あるとき、超分子の研究でノーベル化学賞を受賞された、ジャンピエール・ソバージュ先生(ストラスブール大学)も講聴にいらっしゃいました。せっかくなので弟子筋にあたるジョン先生に「ソバージュ先生と喋りたいので紹介してほしい!」とお願いしたところ、なんと直接お話しする時間をとっていただけました。ソバージュ先生は林先生のことも以前からよくご存知だったようで、いろいろ気さくにお話しいただいて本当に感激しました。

ノーベル賞受賞者のジャンピエール・ソバージュ先生と

集中力と計画性がUP

3ヶ月の留学では実験への集中力が向上し、計画性の大切さを学びました。
フランスの大学は安全面に非常に厳しく、かつ日常生活の時間を大切にするので、教員や学生の研究室での滞在時間が日本より短目です。夜は19時か20時には研究室を出ないといけない。おまけにランチタイムがとても長く、食事の後にきっちりコーヒータイムがあるので、大体1時間半ぐらいは戻ってこれない。そんな環境では、短時間で実験を完了しないと研究が進まないので、集中的に実験するスキルは確実に向上しました。

また分析装置も予約制だったりするので、実験の行程を予測して事前に装置の予約を取っておかないと研究がうまく進みません。留学当初は、実験が終わって化合物ができていそうなのにその確認(分析)ができない・・・困ったなぁ、そんな事態が頻発し実験の計画性の大切さが身に染みました。
集中力と計画性が身について実験を短時間でこなせるようになった分、「考える」「計画する」ことに時間を使えるようなったことが留学の成果だと思います。
留学中に参加した、ストラスブール大学と提携先大学の学生を対象とした研究発表会では、賞をいただくこともできました。

コミュニケーション上手な自分に覚醒

留学当初は英語力の低さを痛感しました。噂ではフランス人は英語が結構下手だという話だったのですが、実際話してみると・・「ああやっぱり自分よりも上手いな」とかなりへこみました(笑)。なので、時間を見つけて英語の勉強をしながら研究室に通っていました。

その一方で、外国人とのコミュニケーションに関しては、「意外とどこの国でもいけるんちゃう!」と変な自信がつきました。「英語力とコミュニケーション能力は違う」ことがわかったというのでしょうか・・・。私はすごく簡単な英語しか話せなくて、相手の話を聞き取れなくて何度も何度も聞き直すのですが、気が付けばすごく打ち解けていて、「けっこう俺イケてるやん!」と思うことが多かったです。
そんな経験をしているうちに外国人と話すこと自体に慣れてきて、今では林研の留学生とも抵抗感なく英語で話せるようになりました。

ベストトラベラーと呼ばれて

ストラスブールは町中が世界遺産という感じの、絵に描いたような綺麗な街並みでした。歩いているだけで非常に楽しくて、最初の1週間は片道40分を毎日歩いて通っていました。
オフには、スイス、ドイツ、スペインにギリシャなど、いろいろな国に旅行に出かけて、本当に楽しかったですね。ジョン先生からも「君はベストトラベラー」だと言われました。(ベストケミストとは呼ばれませんでしたが・・)

世界を舞台に生命機能の制御に挑みたい

せっかく留学の機会もいただいて、自分のコミュニケーション能力でも「なんとかなるぞ!」という自信がついたので、今後は世界で活躍できる化学者になる目標を持って、世界で通用するような研究を進めていきたいと思っています。

博士後期課程を修了した後は、創薬など医療系の民間企業に就職する予定です。子供の頃から、少量を体に取り込むだけで身体の状態が変わる、生命現象を制御する医薬品てすごいなと思っていました。
そして、将来的には、生命機能の制御に関するような仕事をしてみたいし、海外でも働いてみたいですね。
元々アカデミアに残ることも考えていたのですが、社会に近い研究も経験してみたいので、一旦大学から出て企業に入ろうと思うようになりました。社会がどんなところか、この目で確かめてみたいと思います。

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