インタビュー

やりたいことをすぐできるのが大学の研究者!

応用化学専攻には研究室を主催する教授以外にも多くの若手教員が在籍し、研究・教育に携わっています。今回は鳶巣研の藤本隼斗助教を訪ねて、研究内容やアカデミア研究者の魅力、さらには応用化学専攻の強みについてお話をお聞きしました。
(以下、藤本先生のコメントです)

応用化学専攻鳶巣研 助教 藤本 隼斗
和歌山工業高等専門学校卒業、大阪大学工学部応用自然科学科3年次編入/卒業、同工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了、2022年4月より現職。博士(工学)。

和歌山高専から編入試験を突破して阪大へ

私は元々和歌山高専から3年次編入で阪大に入学しました。和歌山高専から阪大に来る学生は結構少なくて、1学年40人ぐらいの化学コースの半分ぐらいが5年で卒業してそのまま企業に就職します。あと半分が高専の専攻科に進み、残りの10人ぐらいが大学に編入します。大体の大学には推薦で編入できるのですが、旧帝大に編入するには難しい試験があって、各学年1人か2人ぐらいしか行けないと思います。高専で習ってない範囲から問題が出たりするので、独学で勉強しないと厳しいですね。 ちなみに鳶巣研究室には高専出身の学生が、毎年1、2名は入ってきます。

高専入学時は、卒業後に就職するつもりだったんですけど、4年生ぐらいになると、もっと研究したいという思いが強くなって、大学に進むことにしました。もともと研究職に就きたいと思ってもいましたから。

学生時代は応用化学専攻のスポーツ担当!?

阪大工学部に3年から編入してからはバスケットボールサークルで積極的に活動してました。小中高とバスケをやってきて、得意なポジションはシューティングガード※1です。そんなサークル繋がりで周りの仲間からいろいろ面倒を見てもらっていたので、編入による不便さは感じませんでした。

バスケサークルで大会に出場(前列右から2人目)

私はバスケに限らずスポーツが好きで、大学院生時代は応用化学専攻のスポーツ担当みたいな感じですよ(笑)。自分は素人なのにバレーボールチームをつくって体育館で練習したり、応用化学専攻の中でスポーツを楽しんでいたんですが、コロナ禍で活動が途絶えてしまってちょっと寂しいですね。

リンを使った触媒反応の開発

私はもともと学部4年の研究室配属のときは機能性材料関係の研究室を選んだのですが、その後、教授が退官されて鳶巣研が新たにできて、大学院生の間は鳶巣研の学生として研究を行ってきました。鳶巣研の研究では遷移金属の触媒を使うことが多いのですが、私はリンを使って、あたかも遷移金属のように振る舞う触媒反応を開発しています。この研究を始めたのは、博士後期課程に進学してからです。

修士課程の間は金属を使った触媒を開発していて論文も出しましたが、博士後期課程に進学してから、リンに着目して新しい研究テーマの種を見つけることができたんです。そこからは研究がいい感じに広がって、D2の終わりには論文を3報出せていました。実は修士課程の2年間はあまり研究がうまくいってなかったんですが、悲観的にはならなかったですね(笑)。

新しいテーマ探索に挑戦した1年

助教になって学生時代と同じ研究をやっても評価されないと思い、本気で新しいことやろうと決めてこの1年間いろいろ挑戦してきました。これまでとは全然違うテーマなんですが、いくつかうまく進み出しているものもあるので、これからが楽しみです。 一つは原子1個を化合物に埋め込むという研究です。最初にNHCという特殊な化合物で成功した研究成果による論文がScienceに載ったんですが、もっと汎用的ないろんな化合物に対して適用するための研究を進めています。独自の研究分野を確立したいですね。

研究する時間が欲しくて博士後期課程に進学

阪大に3回生から編入したときには、もう博士後期課程進学を決めていました。というのもせっかく阪大の大学院に進んでも修士課程修了後に就職するのであれば、M1から就活を始めないといけないので研究できる時間が少なすぎると思ったからです。私はともかく研究する時間が欲しくて博士後期課程に進みました。

実験室での藤本先生

カデットプログラムで多様な経験

私の場合は博士後期課程進学が既定路線でしたので、学部卒業後は博士課程教育リーディングログラムの一つであるカデットプログラム※2に進みました。M1からD3まで5年一貫のプログラムで、「国内研修(企業でのインターンシップ)」と「研究室ローテーション(国内の他大学)」そして「海外研修」の3つのカリキュラムが特徴です。カリキュラムはかなりハードなものでしたが、経済的支援と授業料の免除も受けることができてとても助かりました。最近では次世代挑戦的研究者育成プロジェクトとか博士後期課程学生のサポート制度が充実してきているので、経済的な不安はかなり軽減される傾向にあると思います。

企業生活を経験してアカデミアの魅力に気付く

カデットプログラムの国内研修で、D1のときに3ヶ月間の企業生活を経験しました。正直そのときは、企業もアカデミアも両方いいとこあるなと感じました。その後大学に戻ってからじっくり考えてた結果、大学は自分のやりたいことを直接すぐにできるところで、そこが最大の魅力だと気づいたんです。インターンシップでお世話になった企業からは熱心に誘っていただいていたので、かなり悩みましたが、最終的にはアカデミアの研究者になろうと決めました。

志が高い学生が多い応用化学専攻

他の研究室のことは正確にはわかりませんが、応用化学専攻の学生さんは総じて優秀な印象です。特に最近では、研究室配属を成績順で決めることが多いので、行きたい研究室がある学部生は早い時期からしっかり勉強しており、本当に志が高い学生が多いと思います。
鳶巣研に入ってくる学生もすごく優秀です。研究室自体が学生主体に動いてる部分が多いので、学生同士で日常的に研究のディスカッションをしていますね。「面白いと思ったことはやってみよう」という鳶巣研の雰囲気も、ディスカッションが活発な理由かもしれません。

ヒトの多さが応用化学専攻の魅力!!

阪大応用化学専攻のわかりやすい強みは、めちゃめちゃヒト(学生&教員)の数が多いことです。私は編入する段階で化学の道に進もうと決めてはいたのですが、具体的にどんなテーマの研究をしようとかまでは決めていませんでした。ですので、教員数や研究室の数が多くて研究テーマも多様な応用化学専攻を選びました。そこが応用化学専攻の強みであり、一番の魅力じゃないかと思っています。

学生目線で言うと、高専は各学科40人ぐらいのすごくクローズな世界ですが、大学には学生も多くてサークル活動や研究室といったいろんなコミュニティができるのが素晴らしい。最近はコロナ禍の影響で、そういうコミュニティが作りにくいですが、私が3年で編入したときは、応用化学コーズ80人全員で飲みに行ったりしていました。そんな感じでしたので同級生に知らない人はいなかったです。

アカデミアの研究者としても、同じ組織に研究者が多いっていうのはとてもありがたいんです。例えば、ある装置を使いたいときには、あの研究室に借りに行こうとか、装置の使い方教えてもらおうとか、研究を通じた助け合いみたいなことができるのです。それも人が多ければ多いほどいろいろできる。人が多いというのは本当に魅力的ですよ。

新しい反応開発に邁進します!

アカデミアと企業の研究者の違いは、自分の好きなことがすぐにできるかどうかだと思っていますので、自身の好奇心の赴くままに研究に邁進したいです。そしてその研究成果が、結果的に世の中の役に立てばなお素晴らしいですね。実際、私が今進めている研究は、全く新しい反応を開発する反応開発という分野なんですけど、その反応が何の役に立つかやっているときはわからない。でも、将来的に何か医薬品とか機能性材料とかの開発に繋がる可能性があるわけです。 私が学生のときは、研究成果を出したい思いが強くて、自分の考えが近道でアウトプットできそうな材料開発の研究に進もうかと考えていましたが、実は全然そんなことなくて、どの分野でもやっぱりちゃんと考えないといけない。そいうことに気づいて、今はガッツリ反応開発に取り組んでいます。

好奇心旺盛な学生さん大歓迎

鳶巣研は自分でやりたいと思ったこことをできる環境にあります。学部からこれがやりたいって学生さんは少ないと思いますが、好奇心があってやってみたいことが出てきた人にとっては、すごく楽しい環境だと思います。なので、好奇心旺盛な学生さんは大歓迎です。どんな学問でも好奇心を持つことが一番大事だと思います。

※1 シューティングガード:ドライブインや3Pシュートでオフェンスを牽引するポジション。スラムダンクの三井寿のポジション。

※2 カデットプログラム:正式名称は「インタラクティブ物質科学・カデットプログラム」。物質科学分野での卓越した専門家を目指すことに加えて、将来その専門性を活かして産学官にわたって活躍するリーダーを育成することを目指す、5年一貫の博士人材育成プログラム。

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