研究トピックス

超分子ポリマー形成に起因する化学センサーの感度増幅
ダイナミックアロステリックエフェクターの概念を提唱

応用化学専攻の櫻井英博教授、燒山佑美准教授、大学院生の中澤廣宣さん(博士後期課程 研究当時)、東京工業大学理学院の福原学准教授、筑波大学の宮川晃尚助教らの研究チームは、モノマーが水素結合のような弱い分子間相互作用で連なる超分子ポリマー形成が、化学センサーのシグナルを増幅(平衡定数を向上)させることを実証した。

化学センサーは有害物質の検出や爆発物の検知、がんの発見などに利用されており、主に超分子化学や分析化学の分野において特に注目を集めている。また、化学センサーで得られたシグナルを増幅する手法として、蛍光共役高分子を用いる系が代表例にあげられる。本研究での革新的な点は、シグナル増幅手法として、生体内のヘモグロビンで用いられているアロステリズム※1に着目したことである。本研究チームは、このアロステリズムの度合を調節できるエフェクター※2としておわん型分子のスマネンを使用した。(下図(a))このスマネンから構成される超分子ポリマーを用い、標的となる薬理活性なステロイドをセンシングしたところ、化学センサーのみでセンシングした際と比較して平衡定数は62.5倍に増幅された。(下図(b))

図. スマネン超分子ポリマーによるシグナル増幅

(a)スマネン超分子ポリマーの形成機序 (b)アリルエストレノールのセンシングにおける、スマネン超分子ポリマーのダイナミックアロステリックエフェクター効果の実証

今回見出した超分子ポリマーについて、シグナル増幅機能を動的に調節できるという特徴から、ダイナミックアロステリックエフェクターと命名した。

新たな増幅センシング手法を提唱したことから、従来の化学センサーでは分析が不可能であった分子に対するセンシング手法として、超分子化学・分析化学分野への波及効果が高いと考えられる。また、ダイナミックアロステリックエフェクターは分子認識能を自在に調節可能であることから、ドラッグデリバリーシステムやタンパク質のフォールディング異常に起因する疾患の治療薬である薬理学的シャペロンなど、超分子ポリマーを用いた医薬品への展開が期待される。

※1タンパク質の機能が他の化合物(エフェクター:後述)によって調節される現象。
※2タンパク質に選択的に結合してその生理活性を制御する分子。

本成果は2024年5月31日(現地時間)発行の英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

タイトル:“B Amplification sensing manipulated by a sumanene-based supramolecular polymer as a dynamic allosteric effector”
著者:Hiroaki Mizuno, Hironobu Nakazawa, Akihisa Miyagawa, Yumi Yakiyama, Hidehiro Sakurai, Gaku Fukuhara

DOI:10.1038/s41598-024-63304-4

本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240619_1

EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1048613

大阪大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 櫻井研究室
https://www-chem.eng.osaka-u.ac.jp/~sakurai-lab/

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