「昭和レトロな寮でスイス留学を満喫!?」
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
菊地研 博士後期課程1年 福田 寛人さん
留学先:スイス スイス連邦工科大学チューリッヒ校 ドナルド・ヒルバート名誉教授
留学期間:2024年7月〜9月

留学前はタンパク質によるMRI造影剤の制御を研究
私は今回のスイス留学以前は、菊地研でフッ素MRI造影剤を研究していました。ざっくり言うと、今まで見ることができなかった生体の組織を見るための研究です。MRIという装置を使うと造影剤が届いた組織を見える化できるので、我々は造影剤を見たい組織になんとか届けようとしています。ナノ粒子状の造影剤の周りをちょっとずつ変えていくことで、造影剤の生体内動態を制御しようとしています。大きな括りで言えば、少し医療寄りの生命科学分野の研究です。ただ、臨床化にはまだまだ遠い状況です。
共同研究の一環としてのスイス留学
スイスへの短期留学では、菊地教授がポスドク時代に在籍していた研究グループのボスであった、ドナルド・ヒルバート名誉教授のラボにお世話なりました。菊地研との共同研究の一環としてのスイス行きでしたので、航空券も滞在費も全て研究費から出していただき、非常にありがたかったです!今回の留学は、私がM2のときに菊地先生からお話をいただいてから少しずつ準備を進めて、D1の夏に実現しました。修士学生のときにイギリスへの短期留学を経験していたこともあって、今回は「海外だっ!」という変な気負いはありませんでした。

スイスではタンパク質ケージを研究
ヒルバート先生のラボでは、人工的に設計されたタンパク質ケージ(格子)に、できるだけ多くのRNAを入れる研究に取り組みました。究極的には、RNAをタンパク質ケージに入れて生体の特定部位まで運び、遺伝子で治療するような応用が考えられます。RNAをそのまま体内に入れてしまうと酵素で分解されてしまうので、それを防ぐためにタンパク質ケージをキャリアとして使うわけです。
それまで菊地研でやっていた研究とは、特定の物質を目的部位まで運ぶという面では似ていますが、内容的には違う研究ですね。スタンダードな手法だったので、実験には割とすぐに慣れることができました。

自由な雰囲気のラボ生活
留学先のラボメンバーは、スイス人、ドイツ人、フランス人、ブラジル人、みたいな構成で、割と自由な研究環境でした。ラボに来る時間も帰る時間もバラバラでしたが、平均では朝9時半に人が来だして、17時ぐらいには帰りだす感じです。ラボへの出入りは夜でも自由なので、夕方5時に出て来て朝3時に帰る学生もいました。私も自分の都合で割と自由に時間は変えていました。
ラボ自体が保有する実験装置は菊地研の方が充実していましたが、共用装置へのアクセスはスイスのラボの方がスムーズでした。

嗚呼物価高!「コーヒー付ランチ2,500円〜」
ラボでは13時になると、みんなでカフェテリアにランチを食べに行きました。そこで、1時間弱ぐらいかけて、ランチを食べるのですが、コーヒーまで飲んだら2500円以上はかかりましたね。もちろん、ものによるのですが・・・、高かったです(苦笑)。
ちなみに、普通に街で食べたら、リーズナブルなお店でも3,000円から4,000円ぐらいは普通にかかるんで、なかなか外食はできなかったです。
「昭和」スタイルな寮生活を満喫!?
スイスでは、1フロア15部屋ぐらいの病院の寮みたいなところで暮らしていました。キッチン、シャワールーム、トイレは共同で、6畳ぐらいの居室には洗面台だけがある「昭和レトロ」なスタイルでした(笑)。 キッチンで作った料理は自室に持ち帰るか、キッチンにある食事スペース(狭い!)で食べてましたね。寮にはイタリア、ドイツ、フランス、オーストリアなどから来た研修医がいて、食事スペースでご飯を食べながら話をすることもありました。日本での実家暮らしより自由なんで、特に不便さは感じませんでしたが、こんな部屋でも家賃は月10万円ぐらいで、現地では安い方でした。


執念でマッターホルンも見ることができました
オフには毎週末、チューリッヒ周辺やルツェルンなど、あちこちにに出かけました。季節的に夏だったので、ハイキングみたいに歩き回ったことを覚えています。 有名なマッターホルンもぜひ眺めてみたいと思って、片道3時間半ぐらいかけて出かけましたが、なんと悪天候で全く見えなくて、寒さだけを感じて帰ってきました。あまりにも残念だったので、意を決して再度訪れた結果、曇天ながらその美しい姿を眺めることができました。やはり寒かったですが、嬉しかったなぁ。



屋外ダンスパーティと川泳ぎも
2人の修士学生と1回だけダンスパーティーに行きました。スイスの国立博物館の敷地とかの屋外でやっていて、誰でも自由に参加できるんです。(残念ながら写真はありません)。特に参加費は要らないのですが、飲食が有料で飲み物は1杯2千円近くしてました。
あと意外だったのは、スイスの人たちは普通に川で泳ぐんですよ。日本人が夏に海水浴する感じですかね。湖から流れ出している川でみんな泳いでました。私も泳ぎましたが、足がつかなかったので少しビビりました。

研究には睡眠時間が大切です
スイスの部屋にはwi-fiがなくて毎日8時間半ぐらい寝ていて、睡眠の大切さに気づかされました。これまでは手数で勝負というか、体力に任せて実験をしていましたが、これからは、しっかり睡眠時間を確保しつつ泥臭く頑張っていこうと思っています。睡眠は大事です。
進路については、これからの成果次第の部分が大きいのですが、とりあえず今のところは企業に就職しようかと思っています。実験で手を動かすことは好きなのですが、まだビビッ!!とくるテーマに出会えてないんです。出会えれば大学に残りたいのですが、それがないと多分続かない気がしてします。企業に就職する場合は、業界にもよりますが、D2の夏過ぎぐらいから就活を始めることになると思います。
