「研究もスコッチも恋バナも刺激的!イギリス留学記」
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
菊地研 博士後期課程1年 飯嶋航平さん
留学先:イギリス エディンバラ大学 マーク・ベンドレル教授
留学期間:2024年7月〜2024年11月

菊地研と密接な関係のある医学寄りのラボに留学
2024年7からの留学先(エディンバラ大学/イギリス)については、菊地先生から「今ならここのラボに行けるけど、どう?費用も研究費から出せるし」とお声がけいただきました。大学や国の留学支援制度もあるのですが、探すのも手続きも大変ですので・・・ホント助かりました。ありがとうございました。
留学先のベンドレル先生と菊地先生はすごく親しくて、ポスドクや学生をお互い継続的に受け入れるなど、菊地研とは深い繋がりのあるラボです。ベンドレル教授のラボは医学寄りなのですが、化学的手法を使って、クリニックでの臨床まで応用できるものをつくろうという研究をされています。

蛍光プローブの観察時間をタンパク質で延ばす
蛍光プローブという光を出す分子を使って、高解像度の顕微鏡で細胞を見る手法があるのですが、現状では観察時間が1分程度と限られています。その原因は、蛍光プローブ色素の活性がなくなって光らなくなること。それを化学的な手法を駆使して、無制限に観察可能にしていこうというのが、私が菊地研で取り組んでいた研究の大枠です。
私は蛍光プローブと同時にそれにくっつきやすいタンパク質もつくり、この両方を操作することにより、観察時間を延ばそうとしています。この手法では、タンパク質と蛍光色素が可逆的にくっついたり剥がしたりできますので、蛍光色素が失活しても、剥がして新しいものに付け替えることができます。それを繰り返すことができれば、時間無制限で見ていることになります。
現在は、蛍光プローブをまずつくって、それに合わせてタンパク質の改良を進めている段階です。
この研究成果が、生物や生命科学の研究につながってくれれば嬉しいですね。

タンパク質の知見を提供し、臨床の知見を学ぶ
ベンドレル先生のラボでは、がんに関わりのある生体内現象の1つを解明するための、特別な化学的プローブをつくろうとしていました。ただし、先方のラボがまだタンパク質をそんなに使い慣れていないため、私がタンパク質に関するノウハウや知見でお手伝いして、その代わりに私は臨床的なことを勉強させてもらうという、ウィンウィンな関係でした。実際にタンパク質の発現や加工についての知見を伝えながら、研究を進めていきました。向こうのラボの研究にはとてもスムーズに馴染めましたね。実験手法が似ていたことや、留学生の受け入れに慣れていることもあり、1週間目から合成を始めることができたのです。
留学先では2つのテーマを研究していたのですが、向こうの学生と協力してやっていた一つ目の研究については、帰国する際にデータを全部渡してきました。
二つ目の研究は私が自分で考えてやらせてもらっていたものだったので、日本に持ち帰って菊地研で研究を進めています。多分この成果で論文1報は書けると思います。この研究が進むと臨床段階まで進むことになり、留学先のラボの協力が必要になってきます。私が再度向こうのラボに行くか、向こうのメンバーやってもらうか、どちらかかになるはずです。

他国料理のお弁当には要注意!!
留学先はイギリスの大学なんですが、ベンドレル先生はスペイン人なんです。しかもシンガポールで研究をされていたこともあるので、ラボメンバーはスペイン人とイタリア人とシンガポール人でイギリス人は1人もいませんでした。学生が6人、ポスドクが6人おられて、その中で日本人は私1人でした。
ラボのメンバー達はものすごく仲が良くて、ランチのときなんかは、1つのテーブルを囲んでワイワイと会話が弾むんです。そういうときは、論文の話とかも出ますが、僕のお手製弁当の話で盛り上がったりしていました。「スペイン人もいることだし、せっかくだからパエリアでも作っていくかっ!」とパエリア弁当を持って行った結果、なぜかイタリア人に酷評されたりとか(笑)。

忘れられないのは、香港人ジミーの恋バナ
研究以外で私が一番楽しかったの、ジミーの恋バナでしたね。香港から来ている留学生のジミーがすごく面白すぎて・・・。彼はいつも「イギリスに来てから女の子に迫られていて、すごく嫌だっ!」と言っているんです。でも実際には、彼の方からめっちゃ思わせぶりなことをずっとやってる(笑)。女性と手をつないで帰ったり、お互いの家に行ったりとか。そんなジミーのことをラボのメンバーがイジって盛り上がっていました。他の人は落ち着いている人が多かったので、恋バナはジミーの1人舞台でした。

他のラボメンバーとの話で覚えているのは、日本好きのシンガポールの学生さんからしょっちゅう日本についての質問をされたこと。日本の宗教について聞かれたときは、「日本人の多くは何の宗教も信じてないけど、クリスマス、初詣、お盆、といった宗教イベントは大好きですごく熱心だ」と説明しましたが、全く理解できない様子でした。
スコッチのシングルモルトは美味しかった!
留学先ではエアビーに住んでおり、シェアハウス形式で3部屋ありました。家賃は1泊あたり12,000円もしましたから、もう自炊中心にしないと生きていけない環境です。でもラボのメンバーに食事に誘ってもらったときは、全部行くようにしていました。スコットランドなので、飲みに出たら大体みんなスコッチウイスキーを飲みます。日本では絶対飲まないのに、向こうでは大人ぶって、地元のシングルモルトを飲んだりしていました。コーラが1杯で900円ぐらいで、地元のウイスキーは1,100円ぐらいでした。
ポスドクの方に払っていただくことも多くて、本当に感謝です!


美しかったな!マッターホルン
向こうのラボでの研究がそこそこうまく進んだので、研究沼にハマってしまい、オフの日もほとんどラボに通っていました。旅行にも数回行きましたが、旅行の予定がない日はどっぷり楽しいラボライフを送っていました。
たまの旅行ではロンドンに行ってリヴァプールFCのサッカーを見たり、フランスやスイスあたりを回ったりしていました。スイスに留学していた福田君も訪れたマッターホルンは評判通りの美しさでした!


学位取得後の進路は絶賛迷い中
学位をとった後どうするか・・海外のポスドクに出るか、国内の就職か、どっちにするか悩んでいます。「何を決め手に私は決めるんだろうか?」という感じですね。研究成果である論文がいいジャーナルに認められたら続けたいなって思うでしょうし、逆に今これだけ楽しく順調にやっているのに世界からあまり評価を受けなければ、もうやめて就職しようとなりそうです。
研究を進めつつ、これからゆっくり考えていこうと思います。
