インタビュー
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
松崎研 博士後期課程2年 坂本 蓮太郎さん
留学先:アメリカ ワシントン大学 コール・デフォレスト教授
留学期間:2025年9月〜12月
応用化学専攻の博士後期課程に在籍する学生のほとんどが、欧米を中心とした世界各地での短期留学(主に3ヶ月程度)を経験します。
今回は松崎研の坂本さん(D2)の留学生活についてご紹介します。
(以下、坂本さんのコメントです)

体内でオーダーメイドの抗がん剤をつくるための基礎研究
私は松崎研では、がんの特性に合った抗がん剤を、体内のがん細胞の近くで作ることを究極の目標とした基礎研究を進めています。
特定の環境の下ではがん細胞からCA9というタンパク質が出されるのですが、生体内でポリグルタミン酸とポリエチレングリコールの間で反応が起きたときに、このCA9に結合する部位をたくさん持った物質が生成します。この事象のメカニズムを解明することで抗がん剤開発に役立つ知見を得ようとしています。

多重論理ゲートを学ぶための留学先
留学経験者の話を聞いたり、海外でのポスドクの可能性などを見据えるうちに、早い段階で海外の研究環境を経験したいと考えるようになりました。そこで松崎先生に「留学先でこんな研究をしたいです」と相談したら、「じゃあデフォレスト先生がいいんじゃないか」と提案いただきました。その後、松崎先生にコンタクトを取っていただき、留学できることになりました。デフォレスト先生は多重論理ゲート分野で先導的な研究を進めておられる研究者で、この理論を学び、がん治療を目的としたバイオマテリアル設計にも生かしたいと考えたのです。
化学における多重論理ゲートとは複数の化学的入力(PH変化、光照射、酵素の存在など)を処理して、特定の組み合わせの入力の場合にのみ信号(変色、発光)を出力したり機能を発現するシステムのことです。
松崎研ではこのようなスタイルで、学生が先生と相談しながら留学先を決めていく流れが多いですね。
留学先で得たデータでの論文執筆へ
デフォレスト先生とは留学の五ヶ月ぐらい前から数回オンラインでの打ち合わせを行い、研究テーマを絞ったうえでアメリカに渡りました。
留学先ではがん細胞増殖阻害機能を制御できるCA9多価リガンド放出型ハイドロゲルの創製に取り組み、酵素反応や光照射などに伴うCA9多価リガンドの放出速度やゲルの力学特性の変化を評価しました。

3ヶ月間、留学先でやれることは全部やりました。この留学で私がとったデータや試料は日本に持ち帰って、少し追加実験をしたうえで、共著論文にまとめる予定です。 ちょうど細胞がアメリカから届いたところなので、今からセットアップして追加実験をやろうかなという感じです。 実験は全て私がやっていますので、この論文の第一著者は私になると思います。
濃厚なコミュニケーションが印象的な多国籍ラボ
留学先のラボには、博士課程の学生が10人、ポスドクが2人、半年に一度の割合でラボをローテーションをしていく修士課程の学生は平均3、4人在籍していました。メンバーの国籍はバラバラ。東アジア、インド、ヨーロッパ、アメリカでも東部も西部どっちの人もいました。ラボメンバーの専門は合成、組織工学、タンパク質工学など多岐にわたるのですが、コミュニケーションがとても活発で、各プロジェクトで課題を共有しながら積極的に議論して進める建設的な雰囲気がありました。また、教授との個人ミーティングが隔週で行われ、15分という限られた時間で短期目標と研究方針を明確化し、次のアクションに落とし込むスタイルが印象的でした。こんな短時間でもきちんと事前に準備すればちゃんと議論が進むので、このスタイルは自分自身も取り入れたいと思っています。
どこまでも自由な雰囲気のラボメンバー
ラボメンバーの雰囲気はとても自由な個人主義という感じで、 ランチを一緒に食べるとかの習慣もなくて、各自が好きなタイミングでさっさと食べて研究に戻る感じ。コアタイムがないので、みんな早く実験を終わらせて早く帰ろうとしていました。学内にカフェテリアとかはたくさんあるのですが物価がとても高いので、多くのメンバーが自分でランチを持ってきていました。私も頑張ってランチを作ってましたね。
感謝祭とクリスマス前のパーティーは、みんながスイーツとかスナックを一品づつ持ってきて、人気投票(コンペ)なんかも行われてました。 キャンパス内は自然豊かで、実験に疲れたらランニングに行くラボメンバーも多かったですね。

留学生が多いドミトリーに滞在
私が住んでいたのは、入居者の七割ぐらいが大学の留学生のドミトリー。個室のベッドルーム9部屋ごとに共通のキッチンとバスルームがついていて1ヶ月12万円ぐらいでした。吹田キャンパス周辺よりはかなり高かったです。

タコスのフードトラックにはお世話になりました!
大学の近くに国立公園があったのでオフにはいろいろなところを歩き回って、自然を満喫していました。周りにたくさん湖があったので、水辺もよく歩いた記憶があります。


外食するにも予算的に厳しかったので、いいお店には全然行かずにフードトラックをよく利用していました。メキシコの方がやられていうるタコスがいちばんのお気に入りでしたね。フードトラックは普通のお店より安めの1,700~1,800円ぐらいで、手軽に多様な料理を楽しめることが魅力でした。

こんな私が英語耳に!?
私は「英語が得意じゃないことが自慢!」みたいな人間なんです。でも、留学先では大学の職員の方からスーパーの店員さんまで、拙い英語のペースに合わせて待っていてくれて、笑顔で挨拶を交わしてくれたことがとても心強く、気持ちが前向きになれました。ちなみ私のメンターがニューボストンの人で話すのがとても早くて苦労したんですが、2ヶ月目ぐらいから「あれっ?なんか相手が英語で喋ってることわかる!?」って急に変わったんです。それまではスマホの翻訳機能を使ったり、録音して後から聴いたりしていたんですが、普通に聞いてるだけでわかるようになったんです。 英語耳は帰国後も残っていて、留学生達の話が以前よりよくわかりますね。これは研究以外での、めっちゃ大きな成果でした。

フランクな博士学生を目指しています
自分が留学して変わったと感じていることころは、研究室のメンバーと話すときにもうちょっと雰囲気を良くしようというか、積極的に話をしようと思うようななったことです。留学先のラボメンバーの雰囲気がめっちゃ良かった影響だと思います。 元々、私は静かな方で用がなければ話さないタイプでしたが、今は暇そうな学生がいたら意図して話しかけるようにしています。単純にコミュニケーションの頻度を増やしておいた方が、何かがあったときに話しやすくなるはずですから。
これからもさらにフランクな博士学生を目指そうと思っています(笑)。
留学の準備手続きはお早めに!
留学先がアメリカだったせいかもしれませんが、私は4月に手続きを初めてからビザ取得のための面接を受ける許可が出るまで4ヶ月もかかりました。アメリカの大学に書いてもらわないといけない書類や自身で用意しないといけない書類が多すぎて・・・。東京での面接が2ヶ月待ちだと言われたので、結局、沖縄まで面接を受けに行って、なんとかギリギリ間に合いました(汗)。そういう書類準備とかに意外と落とし穴が多いので、油断しない方がいいですね。
現地での生活に関しては、行ってみたら意外となんとかなります。あれこれ悩まずに、ともかく行ってみよーっ!!
