研究トピックス

光とスズの協働による炭素-フッ素結合の変換
~入手容易な原料から含フッ素医薬品への短工程プロセス化に期待~

これまで、パーフルオロ化合物※1の炭素-フッ素結合は極めて強固であるために、安価・安全な可視光を照射するだけの温和な条件での変換反応は困難であり、複数の炭素-フッ素結合の中から特定の炭素-フッ素結合だけを選択的に変換することは達成されていませんでした。

今回、応用化学専攻大学院生の杉原尚季さん(博士後期課程)、西本能弘准教授、安田誠教授らの研究グループは、光触媒であるイリジウム錯体と有機スズ化合物※2を協働させることで、可視光を照射するだけの温和な条件下において、パーフルオロ化合物のある特定の炭素-フッ素結合のみを選択的に切断し、他の官能基へと変換する新しい有機反応の開発に世界で初めて成功しました。(下図)

有機フッ素化合物は医薬品としても注目されており、この研究により入手容易なパーフルオロ化合物から含フッ素医薬の迅速な合成が期待されます。

本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に、6月2日(水)20時(日本時間)に公開されました。

タイトル:“Photoredox-Catalyzed C-F Bond Allylation of Perfluoroalkylarenes at the Benzylic Position”
著者名:Naoki Sugihara, Kensuke Suzuki, Yoshihiro Nishimoto, and Makoto Yasuda
DOI:doi.org/10.1021/jacs.1c03760

なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「「ルイス酸ー外部刺激」系によるイオン性中間体の活性化」(JPMJCR20R3)、文部科学省 科学研究費助成事業の一環として行われました。

※1:分子内に複数のフッ素を有する有機化合物群。複数のフッ素があることで、化合物の熱的安定性や化学的安定性が向上する。

※2:炭素-スズ結合を有する化合物群。有機金属化合物の1つ。工業的にはポリマーの安定化剤に用いられる。また安定性と反応性の両方を兼ね備えていることから、さまざまな有機合成反応に利用される汎用性の高い試薬である。

本研究成果の詳細
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210602_1

安田研究室
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~yasuda-lab/

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