研究トピックス

ホウ素の力でイオンを見る!
長波長側の光で陰イオンを検出する新材料

応用化学専攻の武田 洋平准教授、大学院生の青田 奈恵さん、中川 陸さん、藤内 謙光教授、南方 聖司教授らの研究グループは、デンマーク工科大学との国際共同研究により、溶液中のフッ化物イオンなど特定の陰イオンに反応して、その存在を視覚的に検知できる新しいタイプのセンサー分子を作り出すことに成功しました(図a)。

図 開発した分子のa) 化学構造、フッ化物イオンを加えた際のb) 溶液の色、c) 発光色変化の様子。フッ化物イオンを加えて作製したd) 高分子フィルムの発光の様子

このセンサーは、陰イオンによって引き起こされる見た目の色や発光色の変化を利用しています(図b, c)。さらに、プラスチックにセンサー分子とフッ化物イオンを加えてフィルムを作ると、加えるイオンの量によって発する蛍光が青から赤に自在に変えられることも明らかにしました(図d)。

過剰摂取により健康に害を及ぼすことが知られているフッ化物イオンのような陰イオンを安価かつ高感度に検出する技術は、私たちの健康や環境を守る上でとても重要です。今回、研究チームはフェナザボリンと呼ばれる三配位有機ホウ素化合物の両極性に注目し、電子不足な芳香族分子と組み合わせることで、新しいタイプのセンサーの開発に成功しました。今回得られた知見を発展させて水溶性、特定のイオンへの選択性・結合能を向上させることができれば、将来的には、生体透過性の高い近赤外光を利用した生体内陰イオンの超高感度・高精度検出技術の創出が期待されます。

本研究成果は、4月8日(月)(日本時間)にドイツのWiley-VCH Verlag GmbH社が発刊する国際的に著名な一般化学雑誌「Angewandte Chemie International Edition」に公開(オンライン版)されました。

タイトル:“Anion-Responsive Colorimetric and Fluorometric Red-Shift in Triarylborane Derivatives: Dual Role of Phenazaborine as Lewis Acid and Electron Donor”
著者名:Nae Aota, Riku Nakagawa, Leonardo Evaristo de Sousa, Norimitsu Tohnai, Satoshi Minakata, Piotr de Silva* and Youhei Takeda*(責任著者)
DOI:10.1002/anie.202405158

なお、本研究は、文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域「水圏機能材料」(JP19H05716)、基盤研究(B)(JP20H02813; JP23H02037)、および挑戦的研究(萌芽)(JP21K18960)の支援を受けて行われました。

本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240411_2

大阪大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 南方研究室
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~komaken/

武田洋平准教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/0bbf54a386748dc5.html

2024/11/05 
【研究トピックス】

塗るだけで高効率スピン偏極電流を発生させる
新しいキラル半導体高分子を開発
クリーンエネルギー技術にもつながる新たな可能性...

 

2024/06/28 
【研究トピックス】

超分子ポリマー形成に起因する化学センサーの感度増幅
ダイナミックアロステリックエフェクターの概念...

 

2024/03/12 
【研究トピックス】

単一分子だけで異なる誘電応答性を示す結晶作成に成功
お椀型分子で省プロセス・省コストの物性制御が...

 
閉じる
HOMEへ