研究トピックス

デンプンから生分解性高吸水性ポリマーを開発
ー 紙おむつ廃棄物の堆肥化処理を可能とする新技術 ー

応用化学専攻の宇山 浩 教授らは、自然界に豊富に存在する天然物で安価なデンプンを化学修飾し、多孔質粒子状に加工する手法で生分解性高性能SAPを開発しました(図1、特許出願済み)。

図1.デンプンをベースに開発した生分解性高吸水性ポリマー

2020年環境省資料(https://www.env.go.jp/recycle/recycling/diapers/diapers_recycling.html)によると、SAPを使った紙おむつの国内生産量は235億枚(2018年)であり、年々増加しています。紙おむつはし尿を吸収して重量が約4倍になり、排出量は約220万トンであり、一般廃棄物の約5%を占めています。これが2030年には約7%に増大することが予測され、紙おむつの再利用技術の開発は社会的に急務です。 もし、今回開発された生分解性SAPを紙おむつに使用し、他の不織布やフィルムなどのパーツを生分解性プラスチックに置き換えることができれば、紙おむつ廃棄物の堆肥化処理が可能になり、従来の焼却処理に比べ、環境負荷を大きく低減させることが可能です。

図2. デンプンベースSAPの写真と吸水の様子

本研究成果は、これまで困難とされてきた生分解性の高吸水性ポリマーを安価なバイオマス資源を利用して開発したもので、再利用・再資源化が困難とされてきた紙おむつ廃棄物の新規処理技術につながることが期待されます。堆肥化処理によりし尿成分を含む堆肥が得られ、資源循環が可能となります。宇山教授らは海洋生分解性バイオマスプラスチック(MBBP)開発プラットフォーム※2を2020年に立上げ、生分解性プラスチック製品の開発を企業40数社と既に実施しています。紙おむつは複数の素材から製造されますので、パーツ別に生分解性プラスチックに置き換えることが必要であり、MBBP開発プラットフォームはその役割を担えると期待されています。

本研究の一部は、大阪大学「大阪湾プラごみゼロを目指す資源循環共創拠点」(国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)【地域共創分野・育成型】/2022 年度採択)※3、戦略的創造研究推進事業(JST)「環境調和型分解・劣化・安定化材料の創製」、環境研究総合推進費「プラスチック資源循環の展開とバイオ素材導入のための技術開発・政策研究」(独立行政法人環境再生保全機構)の一環として行われました。

※1 SAP:Super Absorbent Polymer 高吸水性ポリマー

※2 MBBP開発プラットフォーム
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/mbbp/

※3 「大阪湾プラごみゼロを目指す資源循環共創拠点」
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/coinext/

本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231016_3

宇山研究室
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~uyamaken/

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