化学×ロボット:独自開発の自動評価装置で低毒な次世代太陽電池材料を短時間で発見!
応用化学専攻の佐伯昭紀教授、大学院生の西川知里さん(当時、博士前期課程)らの研究グループは、通常は手動で行う測定装置とロボットを組み合わせ、光物性※1、マイクロ波伝導度※2、光学顕微鏡像を自動で測定できるオンリーワンの装置開発に成功しました(図1)。また、このシステムを用いて、有毒元素を含まない次世代太陽電池材料をスピーディーに探索し、その性能向上に成功しました。
本研究で独自開発した協働ロボットを用いた自動評価装置により、大幅な測定時間の短縮(従来比約6分の1)と高精度化(従来比5倍)に成功しました(図2)。手間と時間の短縮によって検討できる条件や材料が飛躍的に増加しただけでなく、研究者がより創造的な仕事に集中できるメリットがあります。また今回、得られたデータを機械学習や統計処理で解析した結果、高効率太陽電池を実現させるための実験的な指針を得ることにも成功しており、研究の加速が期待できます。
本研究成果は、米国化学会誌「JACS Au」に、10月24日(火)14時(日本時間)に公開されました。
タイトル:“Exploration of Solution-Processed Bi/Sb Solar Cells by Automated Robotic Experiments Equipped with Microwave Conductivity”
著者名:Chisato Nishikawa, Ryosuke Nishikubo, Fumitaka Ishiwari and Akinori Saeki
DOI:https://doi.org/10.1021/jacsau.3c00519
なお、本研究は、JST戦略的創造研究推進事業CREST「未踏物質探索」(JPMJCR2107)、JST未来社会創造事業(JPMJMI22E2)、NEDOグリーンイノベーション基金(JP21578854)および日本学術振興会科学研究費補助金(JP20H05836, JP20H00398, JP22H04541, JP21H00400, JP20H02784)、大阪大学・先導的学際研究機構(ICS-OTRI)の一環として行われ、大阪大学大学院工学研究科 西久保綾佑助教と石割文崇講師の協力を得て行われました。
※1 光物性:主に可視光(400~600 nm)と紫外光(300~400 nm)および(近)赤外光(600~1000 nm)領域の光(電磁波)と物質との相互作用に関わる性質(nmはナノメートルで、1 mmの100万分の1)。ここでは特に、光が物質を透過したときに物質に吸収される性質を光吸収、その結果生成した励起状態が元の状態に戻る時に発する光を発光と呼ぶ。
※2 マイクロ波伝導度:マイクロ波は電子レンジやスマートフォンの通信などにも使われている電磁波の一種。太陽電池材料中で、光吸収によって生成した正負の電荷がマイクロ波と相互作用し、マイクロ波の吸収が起こる。ここでは、光パルスを照射した際に、時間的に変化するマイクロ波の強度をマイクロ波伝導度信号と呼び、電荷の動きやすさや寿命と関係する。
また、本自動評価システムの稼働動画を以下のYouTubeでも見ることができます。
https://youtu.be/qqHKA41UtRY
本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231025_2