研究トピックス

イオンペア集合化によって固体常温りん光強度を増大
固体の発光強度を向上させる手法として応用が期待

応用化学専攻の藤内謙光教授らの研究チームは立命館大学生命科学部の前田大光教授らの研究チーム、京都大学福井謙一記念研究センター佐藤徹教授らの研究チームなどと共同で、りん光発光特性を示すπ電子系PtII錯体を新たに合成し、適切なイオンペアとの共結晶化による集合体構造の制御によって、固体状態の常温りん光強度を向上することに成功しました。

従来、π電子系は構造や電子状態に応じ魅力的な光物性を溶液状態で示しますが、固体状態で光物性を発現させることは容易ではありませんでした(図左下)。

これまで、発光性π電子系へのかさ高い置換基導入によって、π電子系の積層を回避する試みがおもに行われてきましたが、組織構造を形成しにくいことから、発光物性の制御が困難となるケースがあり、規則的なπ電子系の組織構造からなる発光性材料の開発が望まれていました。

研究チームはアニオン会合能を有するπ電子系PtII錯体を新たに合成し、固体状態ではπ電子系PtII錯体–アニオン会合体と対カチオンが交互に配列した組織構造を形成し、PtII錯体の積層が回避されることからりん光強度が増大することを、X線構造解析および理論計算を用いた集合体の発光物性の評価から明らかにしました。

発光強度の増大を目的とした分子修飾では複雑な合成がしばしば必要となりますが、本研究で見出した方法では、発光性PtII錯体とアニオンおよび対カチオンの溶液を用い、簡便な再沈殿によって大量・迅速に発光性PtII錯体イオンペアを創製できます。π電子系からなる発光性材料の創製手法として、今後さらなる光機能性材料の展開につながることが期待されます。

本研究成果は、2023年12月5日(現地時間)に、英国王立化学会誌「Chemical Science」に掲載されました。

本研究は科学研究費補助金および立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)などの支援によって実施されました。

掲載誌:Chemical Science
論文タイトル:“Enhanced solid-state phosphorescence of organoplatinum p-systems by ion-pairing assembly”
著者名:Yohei Haketa, Kaifu Komatsu, Hiroi Sei, Hiroki Imoba, Wataru Ota, Tohru Sato, Yu Murakami, Hiroki Tanaka, Nobuhiro Yasuda, Norimitsu Tohnai, and Hiromitsu Maeda
DOI:10.1039/d3sc04564a
URL:https://doi.org/10.1039/d3sc04564a

なお、本研究は、科学研究費補助金および立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)などの支援によって実施されました。

本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231222_2

大阪大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 藤内研究室
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~tohnaiken/

藤内謙光教授

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