インタビュー

「メリハリ研究、旅、パーティ、北欧留学記」

大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
松崎研 博士後期課程2年  諸石 一輝さん 
留学先:スウェーデン ルンド大学(Prof. Malin)
留学期間:2023年10月中旬〜2023年12月中旬

日本人に一人も出会わなかったスウェーデン留学

私は2023年10月中旬から12月の中旬までの2ヶ月間、スウェーデンのルンド大学免疫工学専攻のMalin Lindstedt 教授のラボに留学しました。留学先のラボは研究員や博士課程学生が多かったのですが、みんなすごくフレンドリーで、上下関係を感じないフラットな関係はとても新鮮でした。ラボメンバーの半分はウェーデン出身で、残りは多国籍チーム。ドイツやスイスの方が多く、みんな身長が高く威圧感があるのですが、優しい方ばかりでとても過ごしやすかったです。ちなみにスウェーデン留学中は、街でも大学内でも日本人には一人も出会いませんでした。

パーティで好評だった親子丼

留学していた10月から12月は、ハロウィンやクリスマスといったパーティーが多い季節。ラボのクリスマスパーティはポットラックパーティーみたいな感じで、各自が料理を作ってきて皆でシェアしました。

ラボでのクリスマスパーティー

日本代表の私が作っていったのは「親子丼」。そもそも日本料理を作るための食材があまりなくて、残念ながら親子丼ぐらいしか作れなかったのです。当日は、ちゃんと出汁をとって、鶏肉と玉ねぎと卵で大きなお皿にドンッ!皆の評判は良くて、美味しいと言ってくれました(笑)

クリスマスパーティーの料理、一番手前の丸皿がOyakodon(親子丼)

普段の生活ではミートボールをよく食べましたね。ミートボールはスウェーデンの代表的な家庭料理、いわゆるソウルフードなのですが、これが大きい!小さめのハンバーグぐらいで、とても美味しかったです。

スウェーデンのミートボール

覚えたスウェーデン語は「タック(ありがとう)」のみ

ランチタイムには近くにスーパーでランチボックスを買ってきて、ラウンジみたいな広いスペースでラボのメンバー達と話をしながら食べていました。ヨーロッパの人たちは旅行好きが多くて、休み明けの月曜とかは、その週末の旅行の話とかをよくしていました。その時間で、スウェーデン語を習ってる人がいましたけど、私は「タック(ありがとう)」ぐらいしか覚えられませんでした。

北欧周遊の週末

週末には小旅行に出ることが多かったです。ルンドから電車で40分ぐらいのコペンハーゲンは、街並みの美しさが印象的でした。ダウンタウンを歩くと、道端でサックスとかアコーディオンを演奏している方がたくさんいて、すごくいい雰囲気なのです。街を歩く人たちも、すごく優しそうでした。

他には、スウェーデン国内のストックホルム、ノルウェーのオスロ、それとフィンランドのヘルシンキなどへ。「もう北欧に来ることなんてないだろう」と思っていたので、頑張ってたくさんの場所を訪れました。

英語はなんとかなる!

私は4年で研究室に配属されたときは全然英語が話せませんでしたが、留学生が多い研究室だったので、自然と英語力が身につきました。ある程度は外国の方と話せるけれど、流暢な英語を話されるとついていけない、そんな英語レベルで留学に臨みました。実際に留学した感想としたは、英語はそんなに話せなくてもなんとかなります。ただ、他の分野の専門用語をあまり知らなかったので、そこについていくのは結構しんどかったです。

ガンだけに届く治療薬の開発で直面した課題

もともと私は松崎研で新しいがん治療法を研究してきました。
現在のがんの化学療法には、抜け毛や嘔吐などいろいろな副作用があります。これらは、薬ががん細胞に届かず、他の部位にもがんの薬が効いてしまっているのが主な原因です。この副作用を抑えるには、薬をがんだけに届けるような戦略をとる必要があるのです。私は血中や正常組織のような生理的条件下では毒性を示さず弱酸性条件下でのみ高い細胞毒性を示す胆汁酸由来の薬剤に着目して、がん周辺の弱酸性環境に応答して細胞毒性が高まる設計にすることで、腫瘍部位だけで薬効を発現させるような分子の創製に取り組んでいます。留学前には、培養した細胞に薬を加える段階まで進んでいましたが、薬は体内で異物として認識され免疫細胞によって抑制させてしまうことが多いので、これをどう防ぐかという課題に直面していました。

課題解決のために臨床環境の整ったルンド大学へ

この課題を解決するには、免疫細胞の働きを、より深く理解する必要があります。そのための新鮮な免疫細胞を容易に調達できる環境が松崎研究室にはありませんでした。一方、松崎先生と昔から共同研究の実績があったLindstedt教授が在籍するルンド大学には、実験に必要な患者由来の新鮮ながん細胞や免疫細胞をすぐに採取できる臨床的環境が整っていました。そんな背景もあって、うまくいくかどうかはわからないけれど、免疫細胞の理解を深めるためにルンド大学へ留学しようと決めました。

留学先での研究成果が共同研究へつながる

Lindstedtラボでは理想的な臨床的環境に加えて、免疫に関する測定装置類がすごく充実しており、免疫細胞が活性化したときのシグナルを検知する分析装置が何台も揃っていました。そんな恵まれた環境でどんどん実験を進めた結果、今後の可能性に繋がる研究結果を得ることができたのです。留学から帰ってからは、この研究テーマを松崎研とLindstedtラボとの共同研究として進めていけることになりました。なので、今後もスウェーデンを訪れる機会はありそうです。

ラボのメンバーと

留学でのメリハリ習慣を継続し
がん治療の研究に邁進したい

今回の留学を通じて自分の中で最も変わったのは、研究へ向かうマインドだと思います。
ヨーロッパ全体がそうなのかもしれないですけど、ラボのメンバーたちは9時ぐらいに来て5時には帰宅するんですよ。やるときとやらないときのメリハリがすごくついている。生物系の研究なので、一つの実験のスパンが1週間とか2週間とか、すごく長いのですが、皆さん計画的に実験を進められていました。そんな中、私も決められた時間で実験をやり切らないといけなかったので、「研究に集中して、そして早く帰る!」というマインドが自然と身につきました。

日本に帰ってからも高い集中力で実験ができており、以前は夜遅くに実験を始めてダラダラと研究室にいるときもありましたが、最近では日中で実験を終わらせて早めに帰る日もあります。おかげで完全にそのことをシャットアウトするような切り替えができるようになり、すごく気分良く毎日を過ごせています。今後も、新たな研究マインドで、免疫細胞がどういう働きをしているのかをしっかりと理解したうえで、薬剤分子を加えたときに何が起こるのかを明らかにしていきたいです。

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