インタビュー

応化で研究を楽しみましょう

応用化学専攻には研究室を主催する教授以外にも多くの若手教員が在籍し、研究・教育に携わっています。今回は林研の加藤俊介助教を訪ねて、研究内容や応用化学専攻の学生、さらにはご自身の留学・インターンシップ体験などについてお聞きしました。
(以下、加藤先生のコメントです)

応用化学専攻林研 助教 加藤 俊介
大阪大学工学部応用自然科学科卒業、同工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了、2021年4月同応用化学専攻 助教。工学博士。M2とD1で(アーヘン工科大学/ドイツ)に留学(計8ヶ月)。インターンシップはM1で大阪大学基礎工学研究科真島研(3ヶ月)、D2で住友化学株式会社(3ヶ月)。

自然科学が好きで化学の道へ

私は阪大のオープンキャンパスで応用化学専攻を見学したことがきっかけで、化学の道に進みました。高校生の当時、私は機械系を目指していて、最初は色々な大学の機械系の専攻を見学していたのですが、あまりしっくりきませんでした。その後、この阪大の応用化学専攻のオープンキャンパスで旧平尾研究室を訪れた際に院生の方から聞いたコトバ「自分でつくった分子を自分で研究する」に感銘を受けて、化学系に進もうと決めました。そのときは気づいていなかったのですが、もともと自然科学が好きだったのだと思います。

化学と生物の学際領域へ

応用自然科学科に入学してからの1年間は、化学も生物も物理も授業で学ぶのですが、このときに生物学の面白さにも気づきました。2年では最も興味のあった化学系のコースに進んだのですが、生物学にも興味があったので、4年の研究室配属では有機化学と生物工学の学際領域での研究を進めている林研にお世話になることにしました。

林研ではさまざまな機会をとらえて学生がどんどん外に出ます。私も留学とインターンシップでさまざまな経験を積むことができました。そしてこれらの経験が、研究テーマや進路を決める際の大きな指針となるのです。

学内制度をフル活用して、化学と生物の武者修行へ

4年で林研に配属されて、卒業研究として有機化学と生物工学の学際領域である、タンパク質と金属錯体の研究を1年間行いましたが、改めてきっちり有機化学の土台を作らないないといけないという思いを持ちました。そこで、阪大の学内制度を活用して、基礎工学研究科で有機化学専門に取り組まれている真島研へインターンシップに出たのです。全く違った環境でみっちり3ヶ月間、有機化学だけの研究に打ち込みました。

その後、ドイツのアーヘン工科大学の生物工学系のUlrich Schwaneberg教授の研究室へ、M2で3ヶ月、D1で5ヶ月留学し「進化分子工学」という領域の研究に取り組みました。

当時、阪大とアーヘン工科大学では日独共同大学院プログラムという連携教育システムが運営されており、その中の交換留学生システムを利用したのです。

Ulrich Schwaneberg教授の研究室での集合写真
留学先の友人との食事

(右手前の女性はステファニー・マーテンスさん。2018年の留学生紹介記事に登場いただきました。この時のインタビュアーが、なんと当時D1だった加藤先生!)
https://www.applchem.eng.osaka-u.ac.jp/blog/20180724-2/

自然界で生物は、突然変異による多様性の発現と、環境変化に伴う自然淘汰のサイクルを繰り返すことで、環境に適した姿に進化してきました。高い木の上の葉っぱを食べられるようにキリンの首が長く進化したのも、この突然変異と自然淘汰のサイクルの結果です。そんな進化を人為的に起こそうという学問が「進化分子工学」です。

留学先での私の研究対象はタンパク質。人為的にタンパク質に突然変異を起こして、その中で有用なものだけを取り出してくる。それを繰り返すことでタンパク質の活性や機能性を高めようという進化分子工学の研究です。

タンパク質と金属錯体の出会い

留学やインターンシップで様々な経験をさせてもらった結果、林研での自分の研究テーマは、「金属錯体の導入によるタンパク質の進化」という方向に落ち着きました。

研究者が研究テーマを策定するにあたっては、基本的な指針としてはSDGs(持続可能な開発目標)があります。持続可能な社会の実現に向けてさまざまな課題や目標があり、化学の分野では「効率よくモノをつくる」研究をされている方が多い。私はその一つのアプローチとして、微生物やタンパク質を使った物質変換(ものづくり)に注目しています。従来の有機化学的アプローチだと、どうしても石油などの化石資源を消費することになりますが、生き物の力による物質変換はグリーンケミストリーという面ですごく魅力的だと感じたのです。

ただし、生き物は限られた環境でしか生きていないので、自分の周りに存在しない元素を使うことができません。ということは、逆に言えば今まで生き物が使うことができなかった金属や、生き物が合成できなかった有機分子を生物に入れてあげると、これまで生物がやってこなかった化学反応が起こるかもしれません。 そんな狙いで、博士論文では「タンパク質にロジウム錯体を導入して進化のサイクルを回し、活性の高い変異体を作り出す研究」に取り組みました。まだまだ改善の余地がありますので、これからも研究を進めていく予定です。

企業インターンシップを経験しアカデミアの道へ。

その経験を通じて、企業研究者の専門色の強さが印象に残りました。博士学生が入社したら、一つのプロジェクトテーマを深掘りしていくようなイメージです。いろいろな分野での経験や勉強を活かしていきたい私には、企業よりもアカデミアの方が魅力的に思えました。このインターンシップの後に、アカデミアの研究者として複数の学問をつないで一つの新しい領域を立ち上げる学際領域研究をやると心を決めました。どうしても企業だと、そういうことはやりにくいのです。

大学院生の教科書に載る研究を目指す

論文を読むだけではわからない、さまざまな経験を学内外でさせていただけたので、その知見を使って、生物工学を化学に活かすような研究に取り組んでいきたいです。そして、化学と生物学の周辺で、誰もやっていない新しい学際領域の学問や技術を立ち上げたいという野望があります。自分がやろうとしている研究が化学の有機合成的手法の一つとして確立され、その技術が社会に実装されることを目指します。高校の化学の教科書に載るのは難しいとは思いますが、せめて大学院生の教科書の1コラムぐらいに掲載されると嬉しいですね(笑)。

化学、生物、物理を学べる応用自然科学科

大学受験にあたり、教科書や参考書の勉強をもとに進路を決めろと言われても難しいと思います。その点、応用自然科学科だと大学に入ってからの1年間で、化学、生物、物理の講義を聴いてしっかり自分で考えられます。受験生の時より大学1年の方が、はるかに時間を自由に使えますから。そういう中で自分がどの分野に進みたいのを考えることができるのは、当学科の大きな魅力です。

学部の授業もかなり楽しいですよ。私は大学に入ってから授業で生物学の楽しさに気づき、生き物ってスゴいなと感じました。化学が好きで勉強したからこそ、生物学の面白さにも気づけたんでしょうね。

応化は研究を楽しめる環境

応化の学生は意識が高くて、研究を楽しんでいる学生が多いですね。過去の先輩方からの良い伝統が残っています。言われてやるというよりも、自分で課題を探しながら進む学生が多い。試験で評価される授業と違って、自分が興味を持ったことを楽しんで解決に向かって進むのが研究です。化学に対しての熱意を持っていて、化学を楽しみたいという学生と一緒に研究ができるのは、我々教員にとって大きな喜びです。

刺激に溢れる林研

今は新型コロナ感染症の影響で学外活動が激減していますが、林研は研究室での研究以外の学外活動が多くて、学生時代はとにかく楽しかったです。さまざまな分野の勉強に取り組める環境があることも本当に良かったです。

また、いろんな分野を牽引されている化学者、生物学者が頻繁に林研を訪れ、そんな方々のお話はスゴく刺激的です。逆に他のラボを訪れることも多く、多様な経験ができるのが林研の魅力です。

学生時代の加藤先生

受験勉強中も夢を膨らませて!

受験勉強は面白くないと思いますが、大学に入ったらいろんなことができて楽しいはずです。なので、大学入学後にこういう勉強をしたい、こういうことをやってみたい、そんな夢を膨らませながら受験勉強をして欲しいです。

そして大きく膨らませた夢を持って、阪大に来てください!

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